Firefox OS の勝算

Firefox OS が成功する可能性について論じた記事、"Why Firefox -- yes, Firefox -- will become the mobile OS to beat" の内容が良かったので、一部を訳してみました。所々はしょったり意訳していますので、気になる方は原文をご参照ください。


Firefox OS に懐疑的な人達は Firefox OS が強大な Android に立ち向かえるチャンスはほとんどないと見ている。Firefox OS 同様、Android もフリーでオープンソースのプラットフォームであり、その点で Firefox OS にアドバンテージはない。モバイルプラットフォームの競争はネットワーク効果とアプリの充実で決まり、Firefox OS が足掛かりを得るには Android は開発者の間で既にあまりに大きなリードを持っている。

しかし、この主張には考慮されていない点がいくつかある。

Firefox OS は低スペックの安価なチップセットと小容量のメモリにフィットするよう最適化されている。その一方、Android の開発ロードマップの大部分はハイエンド端末の iOS との競争に向けられている。したがって、もし中国の ZTE などが超低価格なスマートフォンのための OS を探しているとしたら、彼らは Android を選ばないだろう。もちろん、Android はオープンソースなのでロースペック向けにカスタマイズできるが、それは彼らのコア・コンピタンスではなく大きな投資も必要とする。そこに OEM メーカーが Firefox OS 端末を開発するインセンティブがある。

世界で利用されているスマートフォンは 10 億台を超えたが、エリクソンの見積もりでは携帯電話ユーザの全体では 45 億人となり、スマートフォンに移行し得る潜在ユーザは 30 億人いることになる。そして彼らの多くは高価なハイエンド端末には手が届かない。性能を落とした製品でサービスの行き届いていないマーケットセグメントを攻めるという、典型的な破壊的イノベーションのモデルを Firefox OS は成し遂げようとしている。

新しいモバイルプラットフォームのエコシステムを離陸させるには、コンシューマー、OEM メーカー、キャリア、開発者といったステークホルダーを結集させる必要がある。上に述べたようにコンシューマーの潜在的なスマートフォン需要は存在し、OEM メーカーには Firefox OS を支持する明らかなインセンティブがある。

キャリアも同様である。新興国ではプリペイド携帯が一般的であり、中東では 78%、ラテンアメリカでは 80%、アジア太平洋地域では 82%、旧ソ連地域では 87%、アフリカではなんと 96% がプリペイドとなっている。ポストペイド契約は円滑に機能する銀行制度と法制度を必要とし、多くの市場では実現が難しい。ポストペイドモデルでは、キャリアは高収益が得られる契約ユーザを呼び込む手段として、高価なハイエンド端末を販売するインセンティブを持つ。一方、プリペイドモデルには安価な端末がより適している。

開発者が一番の難問である。モバイル関連の企業は既に iOS と Android に注力している。消費力が小さい新興国の消費者は先進国と比べると魅力が少ない。しかし、彼らが貧しいとはいっても 30 億人は大きな市場である。さらに、全ての開発者がサンフランシスコのような豊かなテクノロジーの中心都市に住んでいるわけではない。新興国ユーザ向けのアプリはおそらく新興国のプログラマーが作ることになるだろう。

ここに述べたことはどれも既定の結論ではない。Firefox OS は発展途上でロードマップが計画通りに実現されるか分からない。しかし、モバイルエコシステム全体もまだ発展途上なのだ。


感想

Firefox OS が「従来の価値基準のもとではむしろ性能を低下させるが、新しい価値基準の下では従来製品よりも優れた特長を持つ新技術」(破壊的技術 - Wikipedia) であり、破壊的イノベーションを起こそうとしているという話は新鮮でした。

また、海外ではプリペイドが盛んだと読んだことはありましたが、具体的な数字でそのシェアの大きさを知って驚きました。確かにプリペイドのユーザ層が求めるのは安価な端末なのでしょう。そして、ポストペイド契約で数万円もする端末を割引販売して ARPU で回収するようなモデルは先進国の一部の世界でしか成り立たない特殊なことのようです。

その特殊な一部の世界に暮らす自分にはあまり関係ない話のようにも思えますが、メジャーなスマホメーカーが出す数千円のスマートフォンが世界中に溢れるのだとしたら、影響を受けずにはいられないでしょう。MVNO で扱う所も出て来るでしょうし、片手で扱いやすい 3 インチ台の安価なスマホと大画面のファブレットやタブレットを2台持ちで運用するようなユーザーも出てくるかもしれませんね。

Published: March 10 2014

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